- クラウン向けFRプラットフォーム開発断念
- GA-Lプラットフォームの主役はレクサスLS
- 全幅1.8mの壁
- 「クラウン生産終了」はデマ
- 現行型はロングセラーモデルに
- 次期クラウン、北米ハイランダーベースのSUV
以下で、「自動車リサーチ」が詳しく説明していきます。
トヨタの看板車種、クラウンが現行型を以って事実上の廃止となる見込みである。
その根拠となる最初の報道は、先月2020年11月に中日新聞が伝えたもの。トヨタの地元新聞が報じたとなると、これまでの信憑性の実績から考えて、その内容は疑うべくもない。
このユーザーにとって信じ難いトヨタの方針は、レクサスのLSシリーズの事情が関わっている。
クラウン発表、東京モーターショー2017
トヨタはクラウンのフルモデルチェンジに向けたプラットフォーム開発を断念
2018年発売の現行型クラウンは、GA-Lプラットフォームのナロー版が採用されている。これはレクサスのLSシリーズ、およびLCシリーズでのGA-Lプラットフォームの全幅を縮小させたものである。
そして現在、このGA-Lプラットフォームの次世代型が開発される段階にある。これを進めるにあたって重視されるのは、LSシリーズが進むべき方向である。クラウンではないのだ。これは、LSシリーズがレクサスのフラグシップセダンでもあり、グローバルモデルでもある故、致し方のないことだろう。
レクサスLSシリーズは、フルモデルチェンジで全幅拡大へ
LSシリーズのライバルとされるのは、以下のいわゆるドイツ御三家であるが、これらの全幅は拡大傾向にある。
- まもなく日本でも発売となるメルセデス・ベンツ新型Sクラスは、全幅1954mm。
- 2018年発売のAudi A8は、全幅1945mm。
- 2015年発売のBMW 7シリーズは、全幅1900mm。
このなかではBMW 7シリーズだけが、発売時期が2015年と古いため全幅1900mmであるが、これも次のフルモデルチェンジで拡大されるはず。
居住性、安全性の向上のため、御三家を代表する、フラグシップ プレミアムセダンのカテゴリでは、1950mm前後の全幅とするのが必至となってきている。
対するレクサスLSシリーズ現行型の全幅は1900mmである。これに続く次期型では、ドイツ御三家に倣い、全幅を拡大していかねば、商品力で不利となってしまう状況にあるのだ。
クラウンは、あくまで国内向け、フルモデルチェンジを受けても全幅1800mm以下が要求される
一方で、国内市場にターゲットが絞られたクラウンに要求される全幅は、1800mm以下である。これはグローバルで見れば、普及車クラスの水準である。例えば、VW・ゴルフの全幅は1790mm、プジョー・308の全幅は1805mmである。
現行型クラウンは、FRセダン最上級のGA-Lベースでありながら「ナロー版」という既にギリギリの選択を強いられている。元のGA-Lプラットフォームがさらに拡大となれば、もう1800mmに収めるのは無理というわけである。あるいは、国内向けクラウンの専用プラットフォームを別途、新規開発するというわけにもいかないだろう。
クラウンの次期型中止は、こういった環境下で出たものでもあり、我々ユーザーにとっても受け入れざるを得ない状況にあるのだ。
クラウンセダンのフルモデルチェンジ、あったとしても全幅1.8m超え
また少し視点を変えれば、現段階の「次期クラウン開発中止」あるいは「SUV化」という報道は、市場の反応を見ているという側面もあるだろう。
ユーザー側の反応によっては、やはりもう一代だけ「セダンのクラウンを継続」という判断が下されることも可能性としては残されるのではないか。しかし、仮にそうなったとしても、クラウンシリーズがこれまで死守してきた全幅1.8mの壁を大きく超えることにはなるはず。
あるいは、全幅1.8mに収めた次期型が出されたとしても、それは主要部分がキャリーオーバーで残された実質ビッグマイナーチェンジかもしれない。
新型ミライ発売、クラウンを実質的に後継するプレミアムセダン
現行型クラウンの生産終了はデマ、SNS上のミスリードか
さて、今回の「クラウン終了」について拡散している情報のなかで真実ではない部分も話しておく。
- クラウンの「生産終了」はデマである。
前述の事情はあれど、何も現行型クラウンを2018年発売から2年経過のタイミングで早期生産終了に追いやる必要性は何もない。むしろ、今後、長期に渡って販売継続される可能性すらあるのだ。
クラウンシリーズはこれまで4~5年のモデルサイクルでフルモデルチェンジされてきたが、このペースが守られるなら2022年か2023年あたりが現行型の生産終了のタイミングとなる。これは他の車種に比べれば、非常に短いモデルサイクルでもある。後継車が設定されないのなら、これまでの慣例よりも延長して生産、販売される可能性は高い。
トヨタは幅広いニーズに応える、消えゆく車種に寛大
国内シェア圧倒的ナンバーワンを誇るトヨタは、幅広いニーズに応える懐の深さがある。消えゆく車種への措置は寛大だ。
例えば、5ナンバーサイズのカローラ アクシオ/フィールダーは、未だに販売が継続され、市場のニーズに応えている。カローラシリーズの現行型は全車3ナンバーサイズであるが、5ナンバー車のセダンやワゴンを求めるユーザーのため、現在でも旧モデルの生産、販売が続いている。
プレミオ、アリオンは最終フルモデルチェンジから14年近い販売期間を経て、ようやく2021年3月末の販売終了が告知された。
こういった経緯から考えても、最終型クラウンが手直しを加えながら、法規クリアの限界まで、ロングセラー商品として残る可能性が考えられる。
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フルモデルチェンジでSUV化するクラウンを受け入れられるか
前述の4~5年という短いモデルサイクルをクラウンで実現してきたのは、世代交代の度に新型車に乗り換えるという、一種のステイタスを確立させた販売店の功績によるところが大きい。これからも「新型クラウン」を売りたいはずだ。こういった需要に応えるのが、次期クラウンのSUV化である。
SUVのクラウンなど、もはやそれは「誰もがクラウンと認めない」ところではあるが、そこに一定の需要があることは理解できる。
噂されるクラウン後継のプレミアムSUVは、GA-Kプラットフォームで開発される。RAV4やハリアーもGA-K採用であるが、そのホイールベース延長版に相当するものが北米ハイランダーとして存在する。
クラウンSUVは、北米ハイランダーをベースにプレミアムイメージの専用エクステリアが与えられることになるだろう。
「モノコックボディの最上級SUVとして、クラウンの冠を付けて販売される」というのが、現在のところ想定されているクラウンの後継車種である。
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