トヨタでは新型クラウン(16代目)のフルモデルチェンジ発売に向けた準備が進められている。
複数タイプが検討されてきた次期クラウンのボディタイプであるが、これはプラットフォームレベルでも2つのプランが進行中となっている。
一つはカムリやレクサスESと共通化される「GA-K」プラットフォームを採用するもので、遂にクラウンシリーズは「FF化」という大きな節目を迎える。
そしてもう一つ、FRレイアウトを継続する計画も進められており、これは従来型220系クラウンから「GA-L ナロー」プラットフォームがキャリーオーバーされた、実質的にはフルスキンチェンジ版ということになる。
新型クラウン、エンジン横置きFFレイアウト版が先行発売
次期型クラウンについては紆余曲折があったわけだが、結局はFR車も残されることになりそう。それでもFF車は北米での販売計画があることからもリリースを中止するわけにはいかない。既に「TOYOTA CROWN」のモデル名で、米国での商標登録が済まされている。さらに米国ディーラーに向けては、2022年10月の発売時期が告知されており、もはや後戻りができない段階となっている。
新型クラウンFFレイアウト版は、むしろこの北米での販売計画に便乗する形で日本仕様も用意されると見ることもでき、日本発売の時期は2022年夏と迫っている。ボディ形状はスポーティな4ドアクーペとなるが、いわゆるセダンの範囲に収まるものとなるだろう。

220系クラウンのTNGAプラットフォーム(GA-L ナロー)をキャリーオーバー、次期FRセダンも開発中で2024年発売予想
一方で新型クラウンFR版の方は、FF化に対する販売店やユーザーの反発や要望から湧き上がったもので、開発のスタートが遅れた。発売時期は早くとも2024年頃が想定される。
従来型クラウンは2018年の発売であり、モデルサイクルが6年以上ともなると、フルモデルチェンジの度に乗り換えてきたユーザーを取りこぼすことになりかねない。これは国内向けクラウンをFR車の一本に絞ることができなかった理由の一つにもなっているだろう。
次期クラウンFR版は、新デザインの内外装とトヨタ最新装備の採用により、即席で開発されるモデルである。しかし、そもそも歴代クラウンの短いモデルサイクルは、これまでもスキンチェンジの手法によって実現されてきた。プラットフォームは数代に渡ってキャリーオーバーされてきたのが、クラウンの歴史でもある。TNGA世代のプラットフォーム「GA-L ナロー」は、220系の1代、約4年間しか使われておらず、次期型でキャリーオーバーされるのは通常の流れでもある。
クラウンのフルモデルチェンジ、FRモデルは次が最終型となる可能性
クラウンの次期FRセダンが開発中となっていることは、ファンにとっては朗報となったはず。それでも、クラウン向けのFRプラットフォームを新開発することが難しい状況には変わりがないだろう。これはレクサスのLSシリーズの事情と関わっている。

2018年発売の220系クラウンは、GA-Lプラットフォームのナロー版が採用されている。これはレクサスのLSシリーズ、およびLCシリーズでのGA-Lプラットフォームの全幅を縮小させたものである。
そして現在、このGA-Lプラットフォームの次世代型が開発される段階にある。その開発で重視されるのは、LSシリーズが進むべき方向である。クラウンではないのだ。LSシリーズは、レクサスのフラグシップセダンでもあり、グローバルモデルでもあるから優先されるのは当然である。
レクサスLSシリーズは、フルモデルチェンジで全幅拡大へ
LSシリーズのライバルとされるのは、以下のいわゆるドイツ御三家であるが、これらの全幅はいずれも拡大傾向にある。
- メルセデス・ベンツ新型Sクラスは、全幅1954mm。
- Audi A8は、全幅1945mm。
- BMW 7シリーズは、全幅1950mm。
居住性、安全性の向上のため、御三家を代表する、フラグシップ プレミアムセダンのカテゴリでは、1950mm前後の全幅とするのが必至となってきている。
対するレクサスLSシリーズ現行型の全幅は1900mmである。これに続く次期型では、ドイツ御三家に倣い、全幅を拡大していかねば、商品力で不利となってしまう状況にある。
クラウンは、あくまで国内向け、フルモデルチェンジ後も全幅1800mm以下が要求される
一方で、国内市場にターゲットが絞られたクラウンに要求される全幅は、1800mm以下である。これはグローバルで見れば、普及車クラスの水準である。例えば、VW・ゴルフの全幅は1790mm、プジョー・308の全幅は1805mmである。
現行型クラウンは、FRセダン最上級のGA-Lベースでありながら「ナロー版」という既にギリギリの設計を強いられている。元のGA-Lプラットフォームがさらに拡大となれば、もう1800mmに収めるのは無理というわけである。あるいは、国内向けクラウンの専用プラットフォームを別途、新規開発するというわけにもいかないだろう。
クラウンのGA-Kプラットフォームの採用は、こういった環境下で出たものでもあり、我々ユーザーにとっても受け入れざるを得ない状況にある。
ひとまずGA-Lナロー版がキャリーオーバーされて、クラウン次期型FRセダンが開発中となっているが、このプラットフォームをいつまでも使い続けるわけにもいかない。クラウンシリーズは、いずれは完全にFFレイアウトのモデルに絞られることになるだろう。