アクアのフルモデルチェンジは8月、TNGA導入、室内拡大へ
トヨタ・アクアのフルモデルチェンジが2021年8月にも実施される見込み。自動車向け半導体不足による新型車の発売延期が、各メーカーで発生しているが、アクアに関しては当初の計画から約一ヶ月程度の遅れに留まりそうである。
新型アクアは、昨年フルモデルチェンジを受けたヤリスとプラットフォーム共用される。どちらもTNGA(GA-B)が採用され、搭載されるハイブリッドシステムも同じダイナミックフォース世代のものとなる。
先行導入されたヤリスは、2020年度の新車販売で首位となった。トヨタの最新コンパクトカーが勢いに乗る中で、新型アクアが投入される。
ヤリスは近年のコンパクトカーとしては、スポーティーなキャラクターが与えられた。一転して、新型アクアでは居住性、パッケージングに拘った設計となる。新型アクアのボディサイズは拡大され、ヤリスではタイトに感じられた後席スペースとラゲッジに余裕が与えられる。
居住性を重視することは、このクラスでは王道とも言える商品設計であるが、近年ではハイトワゴンタイプの軽自動車に需要を奪われている状況であった。昨年フルモデルチェンジされた他社Bセグメント、ホンダ・フィット、日産・ノートも居住性重視の設計であるわけだが、好調な軽自動車勢からユーザーを取り戻すまでには至っていない。
新型アクアがこれらと同じ轍を踏むのか、あるいはヤリスのように人気車種となれるのかが注目される。
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アクアのフルモデルチェンジで、トヨタはBセグメントハッチバックの2モデル体制を維持
トヨタの国内向けBセグメントハッチバックカーは、アクアとヴィッツの2モデル体制でラインアップされてきた。昨年2020年にはヴィッツがグローバルモデルのヤリスに名称を改め、フルモデルチェンジを果たしている。次は、TNGA世代の技術を導入したプラットフォームを共用するアクアにフルモデルチェンジの順番が回ってくる。
新型アクアは、居住性重視のコンパクトファミリーカーへ
アクアは2011年12月に発売されたモデルで、販売期間9年を超えている。発売当初はトヨタで最も小さなハイブリッドカーとしての役割が与えられていた。
しかし、その後ヴィッツハイブリッドが登場したことで、アクアの立ち位置は曖昧となっていた。
次期アクアとヤリスの違い、差別化がテーマに
トヨタ系列の販売店統合の流れにより、トヨタ系であればどこに行っても同じ車種が選べる状況となった。そんななかで同じGA-Bプラットフォームを採用する小型ハッチバックカーが2車種ラインアップされるということは、これらをいかに差別化していくかということが重要となる。
ヤリスはドライバーズカー、男性から支持
先に出された新型ヤリスは、手動のサイドブレーキを装備し、エンジンフード高さを抑えた視界の良さなどが特徴で、ドライバーズカーとしての性格が強調されている。
最上級にはGRヤリスも設定され、スポーツイメージの強いモデルに仕上げられた。欧州市場や国内でも男性から支持が得やすい商品設計となっている。
ただし昨今のBセグメントカーとしては室内はタイトに設定してあり、これはユーザーによってメリットにもデメリットにもなる。同時期に新型車としてデビューしたフィットやノートが、日常の足として使いやすいゆとりある室内に仕上げられていることと対称的だ。
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次期アクアは居住性重視、女性も選びやすいイメージに
こういった状況下で出される次期アクアは、コンパクトながらも高い居住性が与えられ、ヤリスとは異なるキャラクターが与えられる。
まずボディサイズについては、わずかにヤリスよりも次期アクアが大きくなる見込み。ヤリスは全長3940mmで、4m未満に抑えられていることも特徴の一つであった。アクアでは全長が4mを超えることになる。このサイズアップは後席とラゲッジの余裕として反映され、ファミリーユーザーからの支持を得るだろう。
ヤリスにあったスポーティー感は、アクアでは控えめとなり、女性ユーザーからも選ばれやすい商品に仕上がる。
電動パーキングブレーキなどオートクルーズコントロールと連動した装備も今どきのクルマらしく整えられる。
アクアとヤリスのプラットフォームは共通のGA-B
次期アクアのプラットフォームはヤリスと共通のGA-Bが採用される。TNGA世代の技術を導入することで中身から大幅に進化する。
パワートレインは1.5L 直列3気筒のダイナミックフォースエンジン、M15A-FXE型ハイブリッドシステムに刷新され、基本的にはヤリスハイブリッドと共通システムとなる見込み。現行型アクアの直列4気筒の1NZ-FXE型からは、大きく刷新されることになる。
現行型アクアはハイブリッドシステムの都合上、2WDモデルのみのラインアップであったが、次期型は電気式4WDのE-Fourも用意される。
また、次期型もコンベンショナルガソリンエンジンモデルは設定されず、ハイブリッド専用車となるだろう。
現行型アクアのセールスは低迷、特別仕様車の導入で販売最終局面へ
先月2021年3月の販売台数は、ヤリスが28,466台、アクアは5,304台であった。
ヤリスはフルモデルチェンジから一年が経過するタイミングではあるものの衰え知らずで、車名別ランキングも首位となっている。これには昨夏に追加発売された派生車種のヤリスクロスもカウント加算され勢い付いている。
一方でアクアは、ヤリスの納車が本格化した2020年春以降は販売台数が低下している。それでもモデル末期で商品力が相対的に低下していることも考慮すれば健闘しているほうだろう。お買い得な特別仕様車 S-Style Blackも設定され、販売活動も最終段階といったところだ。
現行型アクアは2021年4月頃には受注終了となる見込み。
そして6月頃から新型アクアの先行予約の受付がスタートし、2021年8月には正式な発売日を迎えるだろう。
自動車向け半導体供給不足による新型アクア発売延期に注意
前述した新型アクアのざっくりとした発売スケジュールは、半導体不足による生産計画の遅れを見込んだものとなっている。
昨年から続く、世界的な自動車向け半導体の供給不足の問題は深刻化しており、自動車メーカー各社とも操業を一時休止させ、生産調整を行うほどの局面となっている。
半導体の在庫には余裕を持っていたトヨタも現在は状況が悪化している。2020年10月の旭化成エレクトロニクスでの火災、2021年2月のルネサスエレクトロニクスでの震災と、半導体サプライヤーでの受難が続いていた。
そこからさらにルネサスエレクトロニクスでは2021年3月19日に火災が発生し、自動車向け半導体の生産ラインが直接的被害を受けた。これにはトヨタからも応援の人員を派遣して復旧作業が進められている。
アクアと直接対抗しそうな新型車ノートオーラ
国内コンパクトカークラスでは、2021年3月になると言われていた発売が延期になったモデルが存在する。日産・ノートオーラである。
ノートオーラはノートの基本構造をベースに設計された上級モデル。新たな発売時期として2021年夏頃が想定されており、これはアクアの発売時期とも重なる。
新型アクアの直接的な対抗車種になることが予想される。
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