自動車向け半導体供給の問題は簡単には解決しない
自動車向け半導体の世界的な供給不足により、各自動車メーカーは生産調整を行う局面となっている。また、新型車の発売時期にも遅れが生じるケースが出てきている。
ルネサスが火災、トヨタも減産や新型車発売延期の可能性
昨年2020年はコロナ禍ということで、自動車を含めたあらゆる産業が足踏みを強いられた。一方で、外出自粛やテレワークといった社会情勢を背景に、ホームエレクトロニクス分野などでは半導体需要が急増した。半導体メーカー各社とも、これらに追従し生産体制をシフトしてきた。
しかしその後、自動車需要は想定外のスピードで回復することになる。この動きには半導体メーカーも付いていくことができず、自動車向け半導体を十分に供給することができなくなった。各国の自動車工場では組み立てラインを停止させ、生産調整を行うほどとなり、この問題は未だ解決していない。
ただし、トヨタに関しては、サプライチェーンに潜む脆弱な部分を以前から把握していた。特に半導体に関しては数ヶ月分の在庫を保有するなどの対策が取られていたため、問題の初期段階では、他メーカーに比べ生産計画の変更は小さく済んでいた。
そんななか、起こったのが昨年2020年10月の旭化成エレクトロニクスの火災である。自動車向け半導体不足に追い打ちをかけるような事態となった。この旭化成エレクトロニクスでの減産分は、ルネサスエレクトロニクスが生産を引き継ぐことになった。この対応により自動車生産への影響を低く抑えられるはずであった。
しかし災難は自動車向け半導体を執拗に追う。
2021年2月の福島沖地震でルネサスエレクトロニクスの那珂工場が被災した。旭化成エレクトロニクスからの減産分を担ったばかりのタイミングである。これには完全復旧まで1週間程度が必要となり、半導体の供給はさらに悪化した。
そして致命的となったのが、同じ那珂工場で発生した2021年3月19日の火災である。
第一報では復旧まで一ヶ月は必要ということであるが、さらに延長する可能性がある。
半導体部品には余裕を持たせておいたトヨタも大幅な生産調整や、新型車発売を延期する可能性が大きくなっている。