SAIはハイブリッド専用車
トヨタからデビューしたSAI(サイ)は燃費性能の高い小さな高級車を目指して開発された。SAIはトヨタとしてはプリウスに続くハイブリッド専用車だ。より上品なイメージで位置付けられており、一番の特徴はセダンボディであることだ。
パワートレインは2AZ-FXE
基本コンポーネンツについては、実はレクサスHS250hと共通部分が多く、パワートレインはハイブリッドシステム2AZ-FXEが採用されている。ガソリンエンジン部分は2.4Lの直4DOHCエンジンが使われ、モーターには2JM型 交流同期電動機が採用されている。
プリウスの1.8L、モーターとの合計出力136psに対しSAIでは2.4Lの190psとよりパワフルで上級なものだ。
ゆとりの室内空間とトランクルーム
SAIは同じハイブリッドカーでありながらもプリウスとは車のキャラクターは大きく違う。ドライバーズシートまわりのインパネ、レイアウトはレクサスHS250h風だ。ナビゲーションやエアコンの空調調整はセンターにあるマウス風のコントローラーから行う。操作には多少の慣れが必要だが、操作中も姿勢の崩れや視線移動が少なく便利な装備だ。
オーディオパネルは蓋が付き普段は閉じてスッキリとしていて上品だ。オーディオの基本的な操作はハンドルに付属のボタンで行えるので普段は閉じたままでも不自由がない。
プリウスはセンターメーターだったが、SAIではメーター類はステアリング奥に位置される。ハイブリッドシステムインジケーターなどのECO情報もそこに集約されている。プリウスの先進的な感じに対し、落ち着いた上質な感じが特徴だ。
植物由来原料のエコプラスチックを室内表面積の約60%採用しておりアピールポイントになっている。
セダンボディながらもホイールベールはプリウスと同値の2,700mmであり、後席広さはプリウスと同等だ。元々プリウスは後席の広さには評価が高かったので、余裕のある後席はそのまま引き継がれている。セダンボディらしい落ち着いた空間が魅力で足元、ニースペースも十分という評判だ。
ドアの閉まる音など細かい部分にも重厚感をもたせコストがかけられているのがよくわかる。
トランクスペースは通常のセダン車並みの十分なスペースだ。ハイブリッドシステム用バッテリーの関係で狭くなることが危惧されたがゴルフバッグも4個積める仕様で一般的なサイズを確保している。
実燃費の口コミと評価
まずSAIの燃費性能のカタログスペックだが10・15モードで23.0km/L、新基準のJC08モードで19.8km/Lとなっている。
そして実燃費の口コミ報告では15~21km/Lの評価が多い。
混雑具合や路面状況で大きく変わるが、概ねコンパクトカーを凌ぐ燃料消費率を実現していると言えるだろう。もちろん車体重量やエンジン排気量を考慮するとプリウスの実燃費には及ばない。
サイはコンサバティブな顧客がターゲット
SAIのライバル車
SAIの価格帯は338万円~で、プリウスの205万円~より数ランク上だがレクサスHSよりは安いという位置付けだ。やや高額の車だがリモートタッチのナビゲーションシステムは最安グレードのSでも標準装備されている。上級グレードのGは380万円~となり、18インチアルミホイール、LEDヘッドランプ、10スピーカーオーディオ、プラズマクラスタエアコンといったレザーシートを除くほぼすべての装備が標準で付いてくる。
同じトヨタ車の中では、マークXの上級版である3.5プレミアムやクラウン2.5ロイヤルサルーンといった車種からのダウンサイジングを考えている顧客の丁度良いサイズと価格設定だ。
他社だとフォルクスワーゲンゴルフやメルセデスベンツBクラス、アウディA3スポーツバックなどの輸入車とのライバルとしても商品力がある。ハイブリッドという今のトレンドや特別感は車にプラスアルファの魅力を求める顧客層にとって魅力的だ。
SAIを走らせてみる
SAIをドライブしてみてまず感じるのはパワフルだということだ。つまりプリウスに比べ排気量のアップは確実に体感できる。
だがそんなことよりも乗り心地の良さの方が特筆すべきだろう。やや硬めの足回りだったプリウスに対し、SAIはサスペンションがしなやかに動いて荒れた路面もしっかり衝撃を和らげてくれる。サスペンション形式はフロントがストラット式、リアがダブルウィッシュボーン式が採用されておりそれなりのコストがかけられている。
上級なサスペンションだが軟らかくセッティングしすぎた感じは否めない。走りも楽しみたいという顧客からはまず候補からは外されてしまうだろう。保守的で落ち着いた客層がターゲットだとは思うが、緊急時の急ハンドルも安心感をもって行えないのは残念だ。
ハイブリッドエンジン2AZ-FXEは回転数を上げるといわゆる4気筒エンジンの音だ。ハイブリッドシステムの効果で回転数を上げる場面は少ないかもしれないが、高級サルーンという位置付けなら弱点に感じる人もいる。
路面からのロードノイズや風切り音はよく遮断されており静粛性はこのクラスの車としてもまずまず合格だ。プリウスとは明らかに違う室内の静かさだ。