日産は軽自動車EVの「SAKURA(サクラ)」を2022年5月20日に発表した。発売日は6月となり、同時期に生産スタートされる計画となっている。
エントリーグレード「S」の消費税込み車両本体価格は233万3100円となる見込みで、55万円とされる国からの補助金を差し引くと、実質負担額は170万円台となる。また、普及グレードとして用意された「X」は、239万9100円で、実質負担額180万円台が実現される。自治体によっては実質負担額は、更に安くなるケースもある。
最上級グレードの「G」は、プロパイロット、アラウンドビューモニターといった日産の人気装備のほか、冬季が弱点とされるEVでは装備が望ましいステアリングヒーター、シートヒーター(運転席)なども搭載され、消費税込み車両本体価格294万0300円の設定となる。こちらは実質負担額230万円台で、人気グレードとなることが予想される。
バッテリー容量は20kWhでセンタートンネルに搭載される。WLTC航続距離としては180kmとなる。
装備面では、緊急停止支援システム付プロパイロットが採用され、プロパイロット走行中にドライバーの異常を検知すると緊急停止が行われる。また、プロパイロットパーキングも採用される。
インパネは全面ファブリック仕上げとなっている。統合型インターフェースディスプレイを採用。
水引をモチーフとしたデザインを各所に採用している。
ボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1655mm、ホイールベースは2495mmとなる。ボディカラーの中には、日本の四季を表現したものが含まれる。
日産は新型軽自動車EVについて、当初は2022年度初頭(つまり4月上旬)の発売を予告していた。その後、2022年4月の下旬の発表と、微妙にスケジュールを遅らせていた。日産は、半導体など部品供給不足の影響を大きく受けている。新年度になってから複数の新型車種の発売時期を遅らせており、この新型サクラの他、新型アリアの標準仕様車、新型フェアレディZなども当初の発売予定時期よりも遅れが出ている。
新型サクラの主な特徴
「日産サクラ」全国希望小売価格(消費税込み)
駆動 | バッテリーサイズ | グレード | 価格(円) |
2WD | 20kWh | S | 2333100 |
X | 2399100 | ||
G | 2940300 |
「日産サクラ」 主要諸元表
バッテリータイプ | リチウムイオンバッテリー |
バッテリー総電力量 | 20kWh |
最高出力 | 47kW |
最大トルク | 195Nm |
最高速度 | 130km/h |
航続距離(WLTCモード) | 最大180km |
充電時間*9 | 普通充電:8時間 (バッテリー残量警告灯点灯位置~100%) 急速充電:約40分 (バッテリー残量警告灯点灯位置~80%) |
全長 | 3395mm |
全幅 | 1475mm |
全高 | 1655mm |
ホイールベース | 2495mm |
車両重量(モデル、装備により異なります) | 1070kg-1080kg |
荷室寸法 | 107L |
乗車定員 | 4名 |
力強くスムーズな走行性能
最大195Nmのトルクを発揮するモーターと、高度な制御技術により実現したすばやくなめらかな加速により、高速道路の合流も無理なくスムーズに行うことができる。また、モーターの構造を最適化することにより、軽自動車としては最高水準の静粛性を実現。軽自動車ならではの小回り性能(最小回転半径4.8m)とあわせて、日常のあらゆるシーンで快適に運転することができる。さらに、低重心化により車体の安定性を高め、段差通過時などにおいても高い乗り心地性能が提供される。
ドライブモードは「Eco」「Standard」「Sport」の3つから選ぶことができ、シーンに合わせたドライブを楽しむことができる。また、アクセルペダルだけで車速を自在にコントロールできるe-Pedal Stepの搭載により、加減速を繰り返す市街地走行、なめらかな減速が必要な雪道などでの運転が、さらに快適で楽しいものとなった。
最先端のe-パワートレイン
「日産サクラ」は、「日産リーフ」にも搭載している最先端のリチウムイオンバッテリーを搭載。搭載効率を高めるユニバーサルスタック構造により、広い室内空間を確保しながらも、最大180km(WLTCモード)と、日常生活に十分な航続距離を確保するとともに、高い信頼性が実現される。
また、EVバッテリーに蓄えた電気を自宅へ給電することで、家庭の電力として使用することも可能。もしもの時には「走る蓄電池」となり、非常時には約1日分の電力を賄うことができる。
軽自動車初搭載の先進装備
高速道路の単一車線での運転支援技術「プロパイロット」の採用に加え、駐車時にステアリング、アクセル、ブレーキ、シフトチェンジ、パーキングブレーキのすべてを自動で制御する「プロパイロット パーキング」を軽自動車において初搭載した。街中から高速道路、さらには駐車場に至るまで、先進技術が運転をサポートする。
上質で洗練されたデザイン
エクステリア
- 静けさの中に潜む力強さを全体で表現しながら、次世代の日産らしさを感じさせるフロントフェイスと光るエンブレムを採用し、落ち着いた大人の雰囲気を感じさせるエクステリアデザインに仕上げられた。
- 軽自動車初となるプロジェクタータイプの3眼ヘッドランプを採用した先進的でエレガントな薄型ヘッドライトの光が夜道でも安心なドライブがアシストされる。また、バックドアには格子をヒントにしたワイドなLEDリヤコンビネーションランプが搭載され、テールランプ全体が美しく光る。
- タイヤホイールには、日本の伝統美を感じさせる水引からインスピレーションを受けたデザインのアルミホイールを採用し、足元のアクセントとして車全体にシックな印象が与えられる。
- 充電ポートは車両の右後ろに設置し、夜間でも簡単に充電が出来るよう、充電ポートリッドを開くとライトが点灯する。
- ボディーカラーには四季の彩りを想起させる2トーンのシーズンズカラー4色をはじめ、全15色が用意された。
インテリア
- インターフェースには7インチのアドバンスドドライブアシストディスプレイ採用のメーターと、大画面の9インチナビゲーションの2つのディスプレイが水平方向にレイアウトされた。ドライバーの視線移動に合わせた形状にすることで、使いやすく、見やすい設計となっている。また、NissanConnectナビゲーションシステムでは充電を考慮したルート設定機能や緊急時のSOSコール、Apple CarPlayワイヤレス接続など、カーライフを快適にする多彩な機能が用意される。
- 高品質なファブリックを広範囲にしつらえ、シートには座り心地の良いソファデザインを採用することで、ワンランク上の品質感が提供される。またカッパー色のフィニッシャーを水平ラインに配置することで、室内をモダンで広がりのある空間へ仕立てられた。
- 飲み物のぐらつきを軽減するホールド力の高いカップホルダーやスマートフォンや財布などの小物が置ける横長のインストセンターロアトレイなど、日常のあらゆるシーンにお使いいただける豊富な収納スペースが用意された。
- ステアリングにはスポーティーさを演出する2本スポークステアリングを搭載。プレミアムインテリアパッケージ(メーカーオプション)では本革巻ステアリングが採用される。
- インテリアカラーは定番のブラック、明るく開放感のあるベージュ、ブラックを基調にベージュシートを搭載したプレミアムインテリアの3種類が用意された。
新型サクラの発売日は「2022年夏」の予告、予想発売日は6月
「日産サクラ」は2022年夏の発売が公表された。クリーンエネルギー自動車導入促進補助金を活用した場合の実質購入価格は、約178万円(消費税込み)からとなる予定となっている。またウェブサイト「SAKURA shopping navi」では、自宅からでも契約できるオンライン注文などが用意される。
新型サクラの生産は水島製作所で行われる、三菱eK クロス EVの姉妹車種も設定
新型SAKURAは岡山県の三菱自動車工業 水島製作所(NMKV社)で生産される計画となっており、日産と三菱の両ブランドから発表された。
同製作所は2009年から2021年にかけて販売された軽EV「三菱・アイミーブ」を生産してきた実績がある。2020年夏頃から総額約80億円に及ぶ設備投資を行い、実質的な後継モデルとなる「日産・サクラ」と「三菱・eK クロス EV」の生産準備をこれまで整えてきた。

新型サクラの航続距離はWLTCモード180kmに仕上げられた、軽自動車としての日常走行に対応
新型サクラのスペックは、バッテリー容量が20kWhで、WLTC航続距離は180kmとなった。また、補助金を差し引いた車両本体価格の実質負担額は、主力グレードで180万円台となる見込み。自治体やユーザーの条件によっては、さらに実質負担額が軽減されるケースも出てくる。高騰するガソリン価格を背景に、人気車種となることが予想される。
サクラの前身となるモデルは、2019年の東京モーターショーで「IMkコンセプト」として発表されていた。EVであることはもとより、軽自動車の枠を超えた高級感のある内外装においても注目を集めた。

一方で、三菱ブランドの姉妹車種は、クロスオーバーSUVスタイルに整えられた。東京オートサロン2022の三菱ブースでは「K-EV concept X Style」が出展され、そのデビュー時期として、日産の新型軽自動車EVと同じ「2022年度初頭」が予告されていた。
「K-EV concept X Style」は、現行ekクロスをEV化させた程度のコンセプトモデルであったが、今回発表された市販型も大差ないエクステリアデザインに仕上げられた。日産ブランドのサクラは専用エクステリアが与えられたわけだが、三菱ブランドのeKクロスEVの販売規模は相当小さくなることが予想され、それには至らなかった。
軽自動車の上級モデルについては、これまでの日産・デイズ ハイウェイスターと三菱・eKクロスなどの例にもある通り、日産が高級プレミアム志向、三菱がSUV志向としてきた。この流れは新型軽自動車EVでも採用されることになりそう。
新型サクラと三菱の姉妹モデルの発売により、いよいよ日本のEV移行が本格化する。日本のEV販売比率は、欧州などと比べて低いと指摘されてきたが、ようやく挽回する時が来た。
新型EVサクラ、ガソリン車からのコストアップは小さく抑えられる
新型サクラの車両価格は補助金を差し引いた実質負担額として、エントリーグレードでは170万円台からのラインアップが見込まれている。
近年、高くなったといわれる軽自動車であるが、それでも新型サクラと近いボディタイプの軽ワゴン車であれば、日産・デイズが約133万円からのラインアップである。上級のハイウェイスターGターボでも約165万円から用意される。また、エネルギーコストとして、ガソリン代よりも電気代のほうが幾分安くなるだろうが、走行距離が短ければ金額的なメリットは大きくはならない。
このように費用を細かく比較していけば、実はサクラの実質負担額170万円台~というのは、まだ「ガソリン車に比べてお得」とまでは言えない水準なのである。
それでも新型サクラは、従来EVと比較して手の届きやすい価格帯になることには違いない。EV化が進まない国内市場に風穴を開けることになるだろう。

新型サクラはセカンドカーに割り切った性能でEV普及を狙う
国産EVでありながらも、実質負担額170万円台~という価格を実現できたのは、軽自動車規格の小さな車体であることに加え、バッテリー容量を20kWhと一般的なEVの半分程度かそれ未満に設定したことも大きな理由である。
フル充電からの航続可能距離はWLTCモードで180kmとなり、開発段階から日産は「安心して日常で使用できる航続距離を確保する」としてきた。これは逆に言えば、長距離走行には向かないことを意味している。航続距離を「セカンドカー」としての利用に割り切ったものとすることで、EV普及に向けての現実的な価格設定を可能とした。
また、急速充電スタンドが少ないということもEV普及に向けての課題であったが、新型サクラの場合は、ほとんどが自宅充電で賄われる範囲の走行パターンが想定される。国内のEV充電インフラが不十分であることは大きな問題とはなりにくいだろう。
新型サクラのリーク画像と動画、日産の軽自動車EV最新情報
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駿河湾SAでご飯食べてのほほんとしてたら軽EVのテスト車両通過。
日産さん土曜日も走行テストやってるのね。 pic.twitter.com/9o6auoD2m6— まさう。 (@xxx_masa_xxx) February 12, 2022
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日産の軽EVのテストカーとアリアに大黒PAで遭遇しました。 pic.twitter.com/rO0URXf3L6
— もちもちん (@Mochin_dayo) March 13, 2022
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日産は「SAKURA(サクラ)」の商標を2021年に特許庁に商標出願
日産は、「SAKURA」の商標を特許庁に令和3(2021)年7月8日に出願している。「商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務」の中には「電気自動車並びにその部品及び附属品」の文言が含まれていた。
