トヨタは「ライズ スペース」の商標出願を2022年12月に行った。そのモデルネームからは、現行ラインナップされる小型SUV「ライズ」の室内空間拡大版が想定される。
現行型「ライズ」は、ダイハツが主体で開発・生産を行ってきたモデル。「ライズ スペース」についても、ダイハツからトヨタへ車体がOEM供給されることになるだろう。
ダイハツは、東京モーターショー2017でコンセプトモデルの「DNマルチシックス」を公開していた。これはSUVスタイルのエクステリアに、3列シートを装備したモデルであった。その後、2019年11月に2列シート車の「ライズ」と「ロッキー」が発売された。ボデイサイズと乗車定員は異なるものの「DNマルチシックス」の流れを汲むエクステリアデザインが採用された。
さらに、DNマルチシックスの市販型に相当すると思われるモデルが、インドネシア生産の新型 セニア(XENIA)として2021年11月に発売された。現地では3代目、約10年ぶりのフルモデルチェンジとなる。
従来型セニアは、これまでアジア新興国を中心に販売されてきた。しかし、DNマルチシックスは「東京モーターショー」で発表されていただけに、日本発売の可能性が残されていた。
日本市場では、3列シート車のトヨタ・シエンタが2022年にフルモデルチェンジを迎えたばかり。新型ライズ スペースの発売時期は、新型シエンタの販売が一段落となる、2024年後半頃が予想される。
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新型ライズ スペースはミニバンではなく2列シート車の可能性も
新型「ライズ スペース」が3列シート車になるかどうかは、現段階では確定した情報ではない。というのも、マレーシアで販売されるライズの姉妹車種には、全長を拡大させたストレッチ版の2列シート車が出るのではという噂がある。これが新型ライズ スペースの正体である可能性は残される。
ただし、国内市場で待望されるのは3列シート車ではないだろうか。そうなると新型ライズ スペースのベースとなるのは、インドネシアの3列シート車「セニア」ということになる。セニアはダイハツの共通プラットフォームであるDNGAが採用された最新の3列シート車で、従来のFRレイアウトから、パッケージングに優れたFFレイアウトへと構造を大きく変えてきている。
また、上位モデルではトランスミッションのD-CVTが搭載されるほか、安全運転支援システムについてもスマートアシスト相当の装備が採用されており、将来の日本仕様の設定を思わせる商品内容となっている。
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新型ライズ スペースには、e-SMART HYBRIDの搭載に期待
新型ライズ スペースのパワートレインをインドネシア セニアと共通化させ、国内販売した場合、少なくとも環境性能の面では力不足となりそう。搭載される1.3L NAの1NR-VE型は新興国向けのエンジンであり、もう一つの1.5L NAの2NR-VE型についても、国内の現行ラインナップで導入例はあるが、グランマックス、タウンエースなど商用モデルでの採用に留まっている。
こういった状況を考えると、国内向けには専用パワートレインの導入が必須となりそう。そんななか搭載が期待されるのがシリーズ式ハイブリッドシステムの「e-SMART HYBRID」である。「e-SMART HYBRID」は現在のところ、「ロッキー」「ライズ」のみで搭載されるが、今後、採用モデルを拡大させていかねば、開発コストを回収できない状況にある。新型ライズ スペースには、ハイブリッドモデルの採用が予想される。
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新型ライズ スペースはSUVスタイル、パッケージングに優れたシエンタと差別化
新型ライズ スペースのボディサイズは、インドネシア セニアの全長4,395mm×全幅1,730mm×全高1,700mmと近くなることが想定される。日本仕様を考えた場合、専用エクステリアで全幅を1.7m未満に抑えられるかどうかも焦点になるだろう。また、全長はトヨタの小型ミニバン「シエンタ」の4,260mmを超えている。シエンタは2022年のフルモデルチェンジで新型となったが、全高が+20mmとなったのみで、従来型から大型化をほとんど受けずコンパクトサイズが維持された。
新型ライズ スペースのエクステリアは、やはり小型SUVのロッキーの流れを汲んだものとなるはず。一方で新型シエンタは、大型サイドモールの採用などにより、SUVテイストに仕上げられたもののデザインの方向性は大きく異なる。
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新型ミニバン ライズ スペースは「SUV×3列シート」をDNGAプラットフォームで実現する
小型ミニバンとしての新型ライズ スペースの発売が待望されるが、かつてのダイハツ生産の国内向け小型ミニバンといえば、2012年まで販売されたブーンルミナスと、その姉妹車種トヨタ・パッソセッテがあったが、これらはセールス的には成功しなかった。当初の計画は、トヨタ生産のシエンタシリーズを廃止し、ダイハツ生産モデルに切り替えるというものであったが、この通りにはならなかった。現行ラインアップを見てもシエンタシリーズのみが継続されている状況だ。
しかし、その後もダイハツでは、ブーンルミナスを後継する国内向け小型ミニバンの可能性について意欲的な姿勢を見せてきた。2017年の東京モーターショー発表のコンセプトカー「DN MULTISIX」では、SUVテイストのデザインを取り入れることで、小型の3列シート車ながらも所有欲が満たされそうな、デザイン性の高い内外装が特徴であった。
小型ミニバンのカテゴリで先行するシエンタ、フリードが居住性重視の設計により多数のユーザーニーズに応えていくなか、ダイハツは当時のトレンドであった「SUV×3列シート」というコンセプトを小型車で模索していた。マツダのCX-8が発売され人気となったのも同じ2017年であった。