トヨタ新開発エンジンが小型化された最大の理由は、次世代EVプラットフォームに載せるため、ギガキャスト採用で2026年より導入予定

自動車関連記事

toyota-next-gen-engine-0

新開発エンジンを小型化させた真の目的は、次世代EVプラットフォーム搭載のため

2024年5月28日、トヨタ、スバル、マツダによる共同開催のマルチパスウェイワークショップが行われました。このワークショップでは、東京オートサロン2024のスクリーンに登場した2つの新開発エンジンの詳細が明らかにされました。

multipathwayworkshop-004

赤のヘッドカバーを持つエンジンは、排気量2.0Lの直列4気筒ターボで、電動ユニットと組み合わせたハイブリッドシステムを前提としています。最高出力は400馬力級、最大トルクは500Nm級とされており、既存の2.4Lターボエンジンと比較して、体積と全高がそれぞれ10%低減されます。また、モータースポーツ仕様では600馬力も視野に入れています。

multipathwayworkshop-003

黒のヘッドカバーのエンジンは、従来の3気筒から4気筒に変更される1.5Lエンジンで、NAとターボの両方が用意されます。これもハイブリッドシステムに組み込まれることが前提です。近年のエンジン設計のトレンドは、気筒数を減らしロングストローク化することで、現行のダイナミックフォースエンジンでも、そのような設計が採用されてきました。しかし、新開発エンジンはそのトレンドに逆行します。

multipathwayworkshop-044

ショートストローク化によりエンジン高さが低くなり、ボディデザインの自由度が高まるだけでなく、空気抵抗係数の低減にも寄与します。自然吸気エンジン同士の比較では、既存の1.5L、3気筒エンジンに対して、新型1.5Lエンジンは体積と全高がそれぞれ10%低減される予定です。また、燃料と空気の混ざりを改善する技術の向上により、ショートストロークでも十分なタンブル流を確保し、良い燃焼状態を得ることができるようになりました。一方、ショートストローク化は低回転域でトルクを得にくくなるデメリットがありますが、これも電動化技術の向上により、バッテリーとモーターによる電動駆動の割合を増加させることで補うことが容易となりました。

toyota-lexus-gigacasting-battery-005

そして、小型化の真の目的は、開発中の次世代プラットフォームへの適合を目指していると考えられます。

toyota-lexus-gigacasting-battery-003

トヨタは、現行のTNGAプラットフォームの後継となる次世代プラットフォームを開発中です。これには、ギガキャスト導入による大幅な部品点数の削減も含まれます。

toyota-lexus-gigacasting-battery-002

この新しいプラットフォームは、BEVとして最高のパフォーマンスを発揮できるよう設計される見込みです。

bz4x-008

現行のe-TNGAプラットフォームは、bZ4X、スバル ソルテラ、レクサス RZなどで採用されたBEV専用プラットフォームとしていますが、これはガソリンエンジン搭載車向けのTNGA-Kプラットフォームから派生したものと考えられます。

toyota-lexus-gigacasting-battery-001

電動化が進む中、自動車開発競争はBEVに焦点が当てられています。

toyota-lexus-gigacasting-battery-004

テスラやBYDといった先行するBEVメーカーとの技術競争で優位に立つためには、
プラットフォームからBEV専用に設計することが求められてきました。トヨタの次世代プラットフォームは、BEVに最適化されたものになるでしょう。そして、そのプラットフォームを基に、エンジンを搭載したPHEVやHEVが開発されると考えられます。

toyota-next-gen-engine-0

そのため、エンジンの搭載スペースが厳しく制約されることから、エンジンの小型化が不可欠となります。

カローラGRスポーツ

次世代プラットフォームを採用する最初のモデルネームとして、2026年に中国市場を皮切りに発売が予想される次期カローラが挙げられています。

トヨタ新開発エンジンの<まとめ>は、次のページ

豊田章男会長が新たなエンジン開発を発表、東京オートサロン2024

トヨタの豊田章男会長は、東京オートサロン2024のプレスカンファレンスで「新たなエンジン開発」に取り組んでいることを発表しました。例年、TOYOTA GAZOORacingで登壇している豊田氏ですが、今回はトヨタ自動車の会長職に退いたことと、日本自動車工業会の会長職を辞したこともあり、「普通のクルマ好きおじさん」という立場が強調されました。これにより、より親しみやすいキャラクターとしての一面が表現されました。責任ある役職から一歩退いたことで、豊田氏は自身の見解を自由に語る機会も増えました。プレスカンファレンスでは、これまでに培ってきた経験や知識を活かし、新たなエンジン開発に関する熱意を語り、持論を展開するシーンもありました。さらに、スクリーンに映し出された一枚の写真には重要な意味が込められていました。その写真には、開発メンバーに囲まれた2つのエンジンユニットが映っており、これが新開発エンジンであることが示唆されました。

トヨタ新開発エンジンの<まとめ>は、次のページ

エンジン開発は未来に向けて必要

東京オートサロン2024では、トヨタ自動車の会長が2023年の活動を振り返り、未来を見据えた取り組みについて熱く語りました。カーボンニュートラルを目指すにあたり、BEVだけに頼るのではなく、エンジンの開発にも積極的に取り組んできたことを強調しました。会長は、「日本を支え、これからの日本を強くしていく技を持った人たちを失ってはいけない」と述べ、エンジン技術の重要性を改めて訴えました。一方で、エンジンに関わる協力会社が銀行から融資を受けられないという問題も浮上しています。「そんなこと絶対にあってはならない」と強い危機感を示しました。会長はトヨタに対して、カーボンニュートラルに向けた現実的な手段としてエンジン技術にさらに磨きをかけるようお願いしました。この提案に共感した佐藤社長以下経営メンバーたちは、新たにエンジン開発を進めるプロジェクトを立ち上げました。「エンジンへ逆行」と見られるかもしれませんが、会長は、「決してそんなことはありません。未来に向けて必要なんです」と断言しました。トヨタはBEVやハイブリッド、水素など多様な動力源の可能性を模索しています。「動力は何でもいいんです。真実はいつも一つ、敵は炭素ということだけです」と結び、未来への決意を新たにしました。トヨタ会長の言葉は、エンジン技術の未来と、仲間を守るための強い意志を感じさせるものでした。トヨタの多様な取り組みは、カーボンニュートラルという大きな目標に向かうための現実的かつ力強い歩みとなるでしょう。欧州の多くの国では、現段階で、または将来的に、ハイブリッド車を含めたエンジン車の販売を事実上、禁止する政策が取られています。しかし、これらの政策は、カーボンニュートラルの達成というのは表向きの理由で、欧州の自動車ブランドを守ることが真の狙いです。トヨタをはじめとする日系ブランド車の環境性能は、優れ過ぎてしまいました。日本車を欧州から排除することが、彼らにとっては最も重要なことです。

トヨタ新開発エンジンの<まとめ>は、次のページ

(このページには、権利者より報道目的または個人的・非営利目的の場合のみの使用が許可されている画像・動画を使用しています。)

 

トヨタ新開発エンジン まとめ

まとめ更新日: 2024/08/29

  • ハイブリッド向けエンジン、2.0Lと1.5Lを新開発
  • 従来よりコンパクトに設計
  • 2.0Lは直列4気筒ターボ、400psクラス
  • 1.5Lは直列4気筒ターボとNA
  • 1.5Lは、従来ダイナミックフォースエンジンの3気筒から4気筒化でショートストローク化

 

 

タイトルとURLをコピーしました