新車登録から5年以上経っていて、エアコンの冷えが弱いなと感じたら、エアコンガス補充で性能回復できる可能性があります。
エアコンガスは完全密閉されていて、一切漏れていないというのが建前ですが、実際のところは、僅かに漏れていきますし、性能劣化もします。こういったケースではエアコンガス補充が効果的に冷えを回復させます。
エアコンガス補充で性能回復が期待できないケース
新車登録から2~3年しか経ってないのに冷えが弱くなった場合や、冷風が全く出ないという状況であれば、エアコン自体が機械的に故障しているケースが考えられますので、今回のDIYによるエアコンガス補充の対象にならないかと思われます。ディーラーや自動車修理業者に相談してみるべきです。
エアコンガス補充を業者に依頼した場合の相場
エアコンガス補充で自動車修理店などに持ち込んだ場合の相場は、5000円~12000円ぐらいで、軽自動車は安く、ミニバンなど室内が大きな車ほど高くなります。
また業者ではエアコンガスクリーニングを行う場合があり、これは真空引きにより古いエアコンガスを全て回収した後、新しいエアコンガスを入れます。エアコンガスは漏れるだけでなく、劣化も冷却能力低下の原因となるため、やはりDIYよりもプロの作業のほうが適切ということになります。
カーエアコンのガス補充のDIY手順
プロの作業のほうが適切ではありますが、DIYでエアコンガス補充をするだけで、性能を大幅に回復させるケースは多いです。費用も安く、作業もオイル交換よりも簡単なので、できるだけ自分でメンテナンスをしてみたいという方は、以下の作業を自己責任でお試しください。
1.エアコンガス補充をDIYするときに必要なもの
「HFC-1234yf」か「HFC-134a」か「R12」をチェック
エンジンルームのどこかにエアコンガスの種類が書いてあるシールが貼られているはずです。まず、このシールを探しますが、最新の車種は「HFC-1234yf」を採用しているケースが多く、この場合、DIYなどによる無資格者がガス補充することはできません。専門業者に依頼する必要があり、またエアコンガスの部品代や工賃も高くなります。高価な上に、直接的なユーザーメリットが乏しいものの、より環境負荷の低い「HFC-1234yf」の採用に移行しつつあります。
DIYによるエアコンガス補充ができるのは、「HFC-134a」か「R12」になります。
「HFC134a」と「R12」で、この後に買うべきものが変わってきます。
メーカー等により表記が異なる場合があります。「HFC-134a」と「HFC134」と「R134a」はいずれも同じです。
また、「R12」は「CFC」と記載されていることがありますが同じ成分のものです。
エアコンガスは1缶200g入りのものが多いですが、今回の作業では1缶でちょうど規定量となりました。もう少し本数が必要なケースもあるかもしれません。
缶入りのエアコンガスとメーター付きエアコンガスチャージホース、この2点が必要で、アマゾンなどネットでも購入することもできます。
2.ガスチャージホースの動作を確認しておく
エアコンガスの缶とエアコンガスチャージホースは手に入れることができたでしょうか。
ここからが具体的な作業になります。
ガスチャージホースのガス缶を取り付ける部分の内側に、針が付いているのですが、ねじを回してガス缶に穴をあける仕組みになっています。
まずは、缶を取り付けずにネジを回してみて、針がどのように動くのかを確認してみてください。
ネジの動作機構が理解できたら、針を完全に引っ込める方向に、ネジを回し切ってください。これにより缶を取り付けた時に、早まって缶に穴を開けてしまう失敗を防ぎます。
3.ガスチャージホースにエアコンガス缶を取り付ける
前の手順を確実に終えた後に、冷媒ガスの缶を取り付けます。
4.エンジンが切れていることを確認します
この段階では、まだエンジンを掛けてはいけません。
5.「L」低圧側のキャップを探す
ボンネットを開けて、「L」の刻印のあるキャップを探します。
ちなみに「L」は低圧側のバルブで、「H」は高圧側のバルブとなります。
「H」高圧側は使いません。
6.エアコンガスチャージホースのジョイント部分の動作を確認
エアコンガスチャージホースのジョイント部分の動作を確認してください。
バネを引いて取り付け状態になり、離すとジョイントに固定される機構になっています。
ガス缶側のように回したりはしません。
7.「L」低圧側にエアコンガスチャージホースを取り付ける
エンジンルームにある「L」のキャップを回して外します。
エアコンガスチャージホースのジョイントを取り付けます。
この段階で、ガスチャージホースの圧力メーターの値が、既定値以上になっている場合がありますが、これはコンプレッサーがまだ動作していないため、低圧側が低圧になっていないためです。後で、コンプレッサーを動かしてからの圧力値が重要になります。
8.エアコンガスチャージホースの空気抜き
ガスチャージホースを「L」に取り付けた時点で、車体側のエアコンガスの圧力がガスチャージホース内に伝わってきています。この状態で、ガスチャージホースとガス缶側のネジを一瞬だけ緩めて、すぐに締めなおします。
シュッと気体が抜ける音がしますが、これはガスチャージホース内に残っていた空気が排出した音です。
空気は、ほんの僅かしか入っていないので、一瞬だけ緩めて音がすれば、十分に空気が抜け切ります。
9.エアコンガスチャージホースの取り回しに注意する
この後、エンジンをかけることになりますが、ちょっと待って下さい。当然、エンジンをかけると、振動が発生して、ベルト類が動き出します。
エンジンルーム内の危険箇所を今一度確認しておき、誤って、手などを巻き込まれないように注意してください。
また、エンジンの振動でガスチャージホースやガス缶をエンジンルームの中に落下することがないように取り回しを工夫してください。
10.エアコンをONにする
このタイミングでエンジンを掛けて、エアコンをオンにします。
温度を最低、風量を最大、内気循環にして、エアコンコンプレッサーがなるべく作動している状態にします。
11.エアコンガスチャージホースのメーターを確認する
ガスチャージホースのメーターを確認してガス圧が適正範囲未満であることを確認してください。適正範囲内にある場合は、エアコンガスの補充はやってはいけません。
エアコンガスは入れすぎでも冷えが悪くなる
エアコンコンプレッサーは、冷媒ガスを圧縮させて気体→液体、減圧させて液体→気体、これらの双方向の行程を利用して熱交換を行います。
- 冷媒ガスが少なすぎる→液体になりづらい
- 冷媒ガスが多すぎる→気体になりづらい
つまり冷媒ガスが少なくても多くても冷えが悪くなります。
ガス圧の適正を見るための小窓(サイトグラス)が高圧側の経路に付いている車種もあります。その場合は、コンプレッサー動作時に小さな気泡が少しだけ見えると適正圧力ということになります。
12.エアコンガスチャージホースのネジを締めて、冷媒ガス缶に穴を開ける
冷媒ガスが足りていない(圧力が低い)ということであれば、ガスチャージホースのネジを締めて針を出していき、冷媒ガスの缶に穴を開けます。
ネジを締め切って、針を出し切っても缶から冷媒ガスはまだ出ません。この段階で、缶に穴は開いているものの、針で穴が塞がっているためです。
13.エアコンガスチャージホースのネジを緩めて、冷媒ガスを出す
エアコンガスチャージホースのネジを緩めて、針を引っ込めます。ここでようやく冷媒ガスがガスチャージホースを通って、カーエアコンの経路に入っていきます。
缶を逆さにすると、勢い良く入りますが、安全の為おすすめできません。エアコンガスが入り切るまで、少し時間がかかりますが、缶を立てて、気化した冷媒ガスを丁寧に入れていくほうが、エアコン装置への負担が少なく、より丁寧な作業と考えます。
缶が冷たくなると、気化が遅くなり、ガスが入りづらくなります。水で濡らした雑巾などで缶の底を温めると、スムーズに冷媒ガスが入ります。
14.エアコンガスチャージホースの針を穴に戻し、ガス放出を止める
エアコンガスチャージホースの圧力計を見て、既定値が入れば、エアコンガスチャージホースのネジを締めて、缶からの冷媒ガスの放出を止めます。
車内のエアコン吹出口から、冷たい風が出ているのを確認してみてください。
15.車体からエアコンガスチャージホースを取り外す
エアコンガスチャージホースのジョイント部分を取り外し、車体側と切り離します。
「L」のキャップを着けて、作業完了です。
EVの航続距離が大幅向上、新型エアコンガスをダイキンが開発
空調機メーカーで知られるダイキン工業が、EV向けの新型エアコンガスの開発を進めている。この新型エアコンガスにより、エアコンを使い続けて市街地走行を行った場合、実用航続距離が最大で1.5倍延長される見込みとなっている。
現在、国内で販売される一部のEVの航続距離はこのような感じ。
- 日産・リーフ … 458km(WLTC)
- テスラ・モデル3 … 580km(WLTP)
- ホンダ・e … 283km(WLTC)
- マツダ・MX-30 … 256km(WLTC)
- レクサス・UX300e … 367km(WLTC)
これらの公称航続距離はあくまで測定方法に基づいたもので実走行では異なる。
ストップ・アンド・ゴーが多い都市部での走行や、エアコンを絶えず使うといったケースでは、公称航続距離よりも大幅に短い走行距離でバッテリー残量が尽きてしまうのだ。
エンジン車に比べ、EVは特に冬期の暖房が苦手とされてきた。エンジンの排熱を室内に取り入れることで簡単に暖を取れるエンジン車に対し、EVは本来走行の為のバッテリー電力を使いヒートポンプを駆動させて車内を暖める必要がある。新型エアコンガスの沸点は、従来ガスより10~15℃低い、マイナス40℃に調節され、ヒートポンプでの消費電力が削減される。
新型エアコンガスは2025年にも市販車へ採用される計画となっている。