ヤリスクロスは専用エクステリア、ヤリスよりもワンクラス上のサイズ感
ヤリスクロスが2020年8月31日に発売となった。2019年の新型ヤリス発表の当初から、ヤリスクロスが出るという噂はあった。ただし、ヤリスはBセグメントのヴィッツの後継でもあり、そういった車格的な事情を考えると、ヤリスクロスはSUVテイストの外装オプションが与えられただけの一つのグレードに過ぎないという可能性も考えられた。
そんななか実際にリリースされたヤリスクロスのエクステリアは完全な専用設計となった。
ヤリスクロスは、ヤリス比でボディサイズが大きく拡大された。ヤリスが全長3940mm×全幅1695mm×全高1515mm、ヤリスクロスが全長4180mm×全幅1765mm×全高1560mm、この違いについては詳細を後述するが、ヤリスクロスのエクステリアから受ける車格、サイズ感は完全にワンクラス上を思わせる。
エクステリアの違い、フロントグリルなど外板全体が別々のデザイン
ヤリスではブラックアウト面積を大きくしたフロントグリルによってスポーティーな顔付きに仕上げられていた。
一方、ヤリスクロスでは、バンパーラインをボディカラーで塗装することで、ダブルフレーム化されている。ヤリスクロスの方が上品な印象である。ヘッドランプもアクが抑えられたシンプルな別デザインが採用された。
ホイール周辺は、ヤリスクロスはSUVらしい走破性の高さを予感させるデザインとなっている。特に太く設定された樹脂製ホイールアーチの形状は独特で、角が取れた正方形である。このあたりはライズやC-HRの円形、RAV4の六角形と比べてもヤリスクロスの個性が際立つ。リアホイールの張り出し感はRAV4にも匹敵するほどに感じる。また、後方にかけて上がっていく樹脂製サイドスカートのラインはC-HR風でもある。
ボディ後半は、ヤリスでは居住スペースを犠牲にしながらもタイトに引き締めることでスポーティーさが強調されていた。
ヤリスクロスでは後席ヘッドクリアランスをしっかり確保し、ルーフが高く取られ、傾斜も控えめ。それでもリアスポイラーのサイズが大きいので野暮ったさは無い。
リアコンビネーションランプは、ヤリスとヤリスクロスで全くの別デザインであるが、いずれも左右連結型の大きく存在感のあるものでデザインコンセプトは大きく変えてきていない。
プラットフォームは共通、ホイールベースは欧州ヤリスとヤリスクロスで同じ
プラットフォームはヤリスとヤリスクロスともにTNGA-Bが採用される。TNGA-Bは2019年発売のヤリスからスタートした新世代プラットフォームである。高性能化に伴い車両開発コストが上がるなか、プラットフォームを多モデルで共用していく考え無しでは、自動車開発は成り立たない。
特に欧州仕様ヤリスとヤリスクロスでは、ホイールベースも同じ2560mmとなる。日本仕様ヤリスは10mm小さい2550mmで、直進安定性よりも小回り性能が求められる日本市場に最適化されているのが数値からもわかる。
ヤリスクロスについては、そこまでは日本市場への合わせ込みがされていないようだ。これは、ヤリスクロスの全高1560mmにも表れており、日本専用設計であれば、あと10mm小さくし1550mm以下とするのが定石。これで国内の多くの機械式駐車場に対応させることができるのだが、盛り込まれなかった。
全幅は、ヤリス日本仕様が1695mm、ヤリスクロスが1765mmで、ヤリスクロスは3ナンバーサイズとなる。ヤリス欧州仕様は1745mmで、ここでもヤリスだけが日本市場を意識した専用設計となっていることがわかる。
ヤリスクロスをトヨタのSUVラインナップの中で比較
少し見方を変えて、ヤリスクロスをトヨタのクロスオーバーSUVのなかで比較してみると、ライズとC-HRの間を埋めるモデルとなる。
全長は、ライズ 3995mm、ヤリスクロス 4180mm、C-HR 4360mmといった関係性。ただし、価格面から見てみると、ライズ 167万9000円~、ヤリスクロス 179万8000円~、C-HR 238万2000円~からラインナップされており、ライズとヤリスクロスで価格帯の重なりが大きい。
ヤリスクロスは、SUVモデルのなかでは手に届きやすい価格設定がされており、販売台数を積極的に取りに行った感じがある。特にライズに関しては、ダイハツ生産のOEMモデルであるから、トヨタとしても本当に売りたいコンパクトSUVがヤリスクロスであることは想像がつく。
通常ヤリスのエントリーモデルは139万5000円であるが、これはヤリスクロスには設定されない1.0Lエンジン搭載モデルである。パワートレインをヤリスクロスのエントリークラスと同タイプ(1.5L コンベンショナル、FF、CVT)であれば、ヤリスは159万8000円。クロスオーバー化による価格アップはちょうど20万円ということになる。
このほかパワートレイン面では、ヤリスクロスには6MTモデルは用意されなかった。
ヤリスには無い、ヤリスクロスだけの装備
ヤリスクロスは全長が長く、かつルーフ後端が高く設定されたことで、荷室の広さでアドバンテージを持つ。荷物固定用のフックが備わるのもヤリスクロスだけ。さらにヤリスクロスZおよびHYBRID Zグレードには、12Vのアクセサリー電源が備わる。
また、この荷室にアクセスするリアゲートにもヤリスクロスだけのオプション設定がある。フロア下に足をかざすことで、電動リアゲートがオープンするハンズフリーパワーバックドアが+7万7000円でオプション設定可能となる。このクラスのコンパクトSUVとしては珍しい装備である。