新型エクストレイルはハイブリッドのみ、日本仕様は1.5L VC-TURBO e-POWER搭載
新型エクストレイル日本仕様が2022年7月20日に正式発表された。
新型エクストレイル日本仕様には新開発パワートレインの「1.5L VC-TURBO e-POWER」が搭載された。
日産はシリーズ式ハイブリッドシステムの「e-POWER」を電動化の手段の一つとしてきた。e-POWERは2016年にE12型ノートで初搭載となり、採用車種が拡大されるなかで、重量車種のセレナへも補機類の強化により搭載が実現されてきた。さらに、E13型ノートからは、e-POWERは第二世代型に進化している。これまで様々な搭載車種への適応を遂げてきたe-POWERであるが、いずれも直列3気筒1.2L NAエンジンが発電に使われてきた。
今後、中大型車種へのe-POWER展開を考えた場合、エンジンサイズのアップは必定であった。新開発の1.5L VC-TURBO e-POWERは、日本向けエクストレイルに限らず、欧州向けのキャシュカイとエクストレイルにも搭載される見込み。さらに将来的にはエルグランドのようなボディサイズの大きな車種も、1.5L VC-TURBO e-POWERによって電動化されることが期待される。
VC-TURBO 可変圧縮比エンジンの量産を成功させたのは日産だけ
e-POWERの新たな発電専用エンジンとして採用される直列3気筒の1.5L VC-TURBOであるが、VCはVariable Compressionの略称で可変圧縮比エンジンを意味する。アイデアとしては古くからあった技術であるが、日産だけが量産化に成功している。初搭載車は2017年のインフィニティ QX50で、これは直列4気筒 2.0L版であった。
ガソリンエンジンの熱効率向上のアプローチとしては、圧縮比を高くすることも多くのメーカーで採用されてきた。しかし、高圧縮比エンジンはノッキングが発生しやすく、その対策が難しかった。
VC-TURBOでは、定速巡航時のような低負荷運転時においては、ノッキングが発生しにくい状態であるため、高圧縮比側にピストン位置を調整することで熱効率を向上させる。
逆に加速時などの高負荷運転においては、ノッキング対策と出力を重視し低圧縮比側にピストン位置が調整される。
このように運転状況に応じてピストン位置をシームレスに変化させる機構が備わっているのがVC-TURBOエンジンの特徴となる。
新型エクストレイルに三菱製PHEV搭載車あり、ただし日本発売は無いかも
新型エクストレイルにはプラットフォーム共用される姉妹車種、三菱・新型アウトランダーがある。新型アウトランダーPHEVとして、2021年12月16日に日本発売されており、新型エクストレイルは先を越された。
ルノー・日産・三菱アライアンスがスタートしたのが2016年。当時からエクストレイルとアウトランダーのプラットフォーム共用がファンの間で囁かれていた。あれから6年近い年月を経て実現することになる。
三菱が得意とするプラグインハイブリッドをエクストレイルに搭載した「エクストレイルPHEV」の登場も期待されていたが、これも実現しそうだ。しかし、日本発売の予定は無く、海外だけの販売に留まりそうである。
また北米では、日産が新開発したPR25DD型の2.5Lガソリンエンジンが、ローグとアウトランダーの両方に搭載されており、プラットフォーム共用によるメリットを双方で享受している。
アウトランダーe-POWERといったモデルの登場も期待されるが、やはり両車種の差別化の意味もあり、特に日本市場での実現は難しいと考えられる。
新型エクストレイル、ハイブリッドだけでなく低価格グレードの継続も期待されるが
新型エクストレイルが1.5L VC-TURBO e-POWERを搭載するとなると、車両価格の高騰は免れない。そんななか、現行型の2.0Lマイルドハイブリッドのキャリーオーバーも低価格グレード存続のため望まれるところである。見た目上のエントリー価格を下げることができれば、幅広いユーザー層を巻き込むことになる。
ただし結局のところ、新型エクストレイルはe-POWER専用車として発売され、今後もマイルドハイブリッド車が追加される予定は無い。
新型エクストレイル ハイブリッド搭載候補、1.2L e-POWERもその一つであった
T33新型エクストレイル日本仕様については、第2世代となった1.2L e-POWERも候補の一つであった。
この1.2L e-POWERは、ノートで85kWであったフロントモーターの出力が、ノートオーラでは100kWに強化されており、さらにリアモーターも加われば、次期エクストレイルへの搭載も問題ないと考えられた。
しかし、ライバルのトヨタ・RAV4が2.5Lハイブリッド車やPHEV車をラインナップするなかで、新型エクストレイルが1.2L e-POWERでは見劣りすることは否めない。やはり1.5L VC-TURBO e-POWERの搭載が最適だろう。
次世代ハイブリッドはT33エクストレイル搭載は間に合わない、熱効率50%の新型e-POWER
日産の電動化はEVとシリーズ式ハイブリッドのe-POWERを主力に進められている。e-POWERについては、熱効率50%の達成が見込まれた次世代型の技術発表が2021年2月にあったが、T33エクストレイルのタイミングで量産車に搭載していくことは間に合わない。
国内向けの現行日産モデルに搭載実績があるのが、1.2Lのe-POWERであるが、ノートのほか車体重量の大きいセレナでも採用されてきた。ただし稀に、長く続く上り坂などでバッテリー残量が底をついてしまうと動力性能で不満が出るケースがあり、弱点とされてきた。しかし、1.2L e-POWERも第2世代となり進化している。さらに、1.5L VC-TURBO e-POWERも加わり、熱効率50%の次世代e-POWERの量産化まで乗り切ることになる。
エクストレイル日本発売が待たされる、コンベンショナル版1.5L VC-TURBOエンジンを北米ローグに導入
海外仕様が先行して販売されるエクストレイルであるが、なかでも中国仕様には、コンベンショナル版の1.5L VC-TURBOが、新開発パワートレインとして採用されてきた。
同エンジン搭載車は、北米ローグの2022年モデルにも追加設定されることが日産から発表された。
1.5L VC-TURBOエンジンはテネシー州デッチャードの工場で、既に組み立てがスタートしている。
1.5L VC-TURBO コンベンショナルは、PR25DD型と比較して、燃費もパフォーマンスも向上
コンベンショナルエンジンとして使われる1.5L VC-TURBOのパフォーマンスは、最高出力201 PS、最大トルク225 lb-ftとなる。これまで搭載されてきた2.5L 直列4気筒のPR25DD型との比較では、最高出力で11%、最大トルクで24%のパフォーマンスアップを遂げる。
また、これと組み合わさるエクストロニックCVTは、ギアレシオカバレッジを17%拡大させ、フリクションを32%低減させている。これにはツインオイルポンプシステムと新開発コントロールバルブシステムが含まれる。ツインオイルポンプシステムは、ゆっくりと低比率から高比率をシフトさせる小型機械式ポンプと、ハードな走行状態に即座に供給オイル量を対応させる大型電動式ポンプの組み合わせによるものとなる。
ローグ 1.5L VC-TURBO搭載モデルの推定燃費は33 mpgとなり、PR25DD型搭載車と比較して3 mpgの改善を見込む。