ホンダは、予定していた「VEZEL e:HEV Modulo X」の発売を中止した。
現行ヴェゼルは2021年にフルモデルチェンジ発売されたコンパクトSUVモデル。2022年1月の東京オートサロンでは「VEZEL e:HEV Modulo X CONCEPT」が出品され、2022年内の市販型発売が予告されていた。
一方で、ヴェゼル通常グレードの納期は、ガソリン車とe:HEVともに、半年以上となっている。今回の追加モデル発売中止は、「既にVEZELをご契約いただいている方のクルマを最優先でお届けするため」としており、昨今の慢性的な半導体不足や不安定な海外情勢などによる生産遅延が原因となった。
また、今回の発表は「延期」ではなく、「中止」としている。今後、ヴェゼルに施される改良やマイナーチェンジなどで、ベース車の仕様が変わってしまうことに対応した可能性がある。
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新型ヴェゼル、2021年フルモデルチェンジ発売の通常グレードは納期半年以上
2021年4月にフルモデルチェンジ発売となったヴェゼルは、4つのグレードが用意されている。
- G
- e:HEV X
- e:HEV Z
- e:HEV PLaY
エントリーグレードの「G」に限っては、1.5Lのコンベンショナルガソリンエンジンが採用された。これ以外は、1.5Lハイブリッドのe:HEVの採用となり、電動化率を向上させたいホンダの思惑が見える。
先代型ヴェゼルにも1.5Lハイブリッドの設定はあるが、これはトランスミッションの7速DCTと、1つのモーターを組み合わせたシステムであった。モーターのみの駆動力を使ったEV走行も行われるが、基本的にはエンジン主体のシステムである。シンプルで高い伝達効率を持つトランスミッションに強みがあった。
一方でホンダでは、i-MMDと呼ばれるもう一つのハイブリッドシステムも実用化してきた。これは2.0Lエンジンと2モーターを組み合わせたシステムでアコード、ステップワゴンなどで採用実績がある。その後、i-MMDはe:HEVに名称を改め、1.5Lエンジン版が昨年フルモデルチェンジしたフィットで初採用された。新型ヴェゼルは新型フィットとハイブリッドシステムの基本部分が共用される。
e:HEVの特徴は、機械的な変速機を持たないことにある。フィットハイブリッドの諸元表によれば、トランスミッションの項目には電気式無段変速機とある。これは実際には、モーターの幅広いトルクレンジに頼り、発進から中高速までをギアやベルトを使った変速をせず、一つの動力伝達機構で行う。この間、バッテリー残量や駆動モーターでの消費電力に合わせて、ガソリンエンジンによる発電も行われる。中高速度域以下では日産のe-POWERと概念が同じシリーズ式ハイブリッドということになる。
ただし、モーターだけによる走行は高速域で非効率になるという弱点があった。e:HEVでは、高速域で駆動モーターが切り離され、エンジントルクと駆動輪が機械的に繋がる。このあたりは、日産のe-POWERと大きく違う。
フルモデルチェンジで新しくなったヴェゼルの外装、内装
新型ヴェゼル、エクステリアの特徴
新型ヴェゼルは、全高が低く抑えられ、前後方向に伸びやかなスタイリングが印象的となった。
シンプルなボディスタイルが故に、ヘッドランプユニットからリアコンビネーションランプまで続く、直線的なキャラクターラインが際立っている。そして、Aピラーが立たされたことによって生みだされた長いノーズが、エンジンルームを強調し、車格が上がったような錯覚を引き起こしている。全長が先代型から伸ばされたように感じる。
後席サイドウィンドウは、ガラス部分が前後方向にしっかりと伸ばされて、その面積を広く感じる。このようなルーフ高が低く抑えられたモデルは、後席乗客に閉塞感を与えがちになるが、横に幅を持たせたウィンドウによって開放感を出すことで打ち消された。
フロントの造形はマツダ顔?
新型ヴェゼルのフロントデザイン、最初の印象はマツダのSUVを連想してしまった人も多いはず。
例えばCX-5と比較してみると、切れ長のヘッドランプユニットや、グリルの配置バランスは、やはりマツダのファミリーフェイスに似ていると感じさせる部分である。さらにヘッドランプ下の広い無装飾エリアは、バンパーパネルの曲面だけで表情が作られており、これもフォグランプをヘッドランプユニット内に収めるようになってからのマツダ車で見られる特徴に近い。
しかし、これらを除けば意外にも共通点は少ないのではないか。
ボディ同色のフロントグリルは、新型ヴェゼルならではの独特な雰囲気を醸し出している。
リアコンビネーションランプは、先代型の縦のシェイプから、新型では横のシェイプに変わった。近年では定番となった、一文字のテールランプとその中央にメーカーエンブレムが置かれるデザインは、近年のSUVらしさを印象づける。
新型ヴェゼルのフルモデルチェンジ、パワートレインは2種類
低価格、1.5L ガソリン車の設定
電動化が叫ばれるこのご時世に、低価格なエントリーグレードとしてGが設定されたのは、ユーザーとしては有り難い。
ハイブリッドのe:HEVが販売の中心
先行予約の状況からも販売の中心となってきそうなのは、e:HEVのハイブリッドモデルである。
後追いでEV仕様の追加を期待させる
今回の新型ヴェゼルは、欧州でも新型HR-Vとして発表されており、同地域でも販売されることになる。そんななか、今後ヴェゼルに搭載されるパワートレインタイプとして期待されるのがEV仕様である。
新型ヴェゼルは最低地上高が先代型から上げられている。これについては、もちろん雪道などで走破性を高めるSUV本来の狙いもあるだろうが、将来の床面バッテリーの積載を目論んだものである可能性がある。
フロントではグリルがボディ同色にペイントされているのが特徴的である。こういったフロントグリルの主張が抑えられたデザインは、EVで採用されがちである。これもEVが用意されているのでは、と思わせる要因の一つとなっている。
日本でのEVブームが本格化しないのは、欧州市場が優先されるから
次期ヴェゼルのインテリア
前席シート高は、先代型よりわずかに低く、少しセダン寄りとなった印象。立たされたAピラーにより、斜め前方の死角は減少し、総じて運転しやすくなっているはずだ。
Aピラー付け根にあるエアコン吹出口は、通常のドライバーに向けた送風と、窓とドライバー頭部の隙間を抜け後席にまで届くモードの切り替えが可能。
操作面では、電動パーキングブレーキが装備される。
リアシートはリクライニング機能無し、前後スライド無しのシンプルなものである。その代わりとして、クッションには厚みがある。ホンダが得意とするセンタータンクレイアウトの採用で、座面を跳ね上げるチップアップ機能が備わる。
後席は、先代型ヴェゼルと比較して、全体的に後ろ寄りに設置されている印象がある。後席ニースペースは広くなっているが、その分、5人乗車時のラゲッジスペースは犠牲になっている。ただし、分割可倒式の後席を倒したシートアレンジでは、ほぼフラットの荷室となり、このクラスの車種としては車中泊としても使いやすく感じる。
新型ヴェゼル、純正アクセサリー装備車
新型ヴェゼルの特徴の一つであるボディ同色のフロントグリルは、ユーザーによっては拒否反応があるはず。これには、ホンダもある程度予想していたようで、ワールドプレミアと同時に発表されたのが、純正アクセサリー装備車である。一般的なSUVらしくブラックアウトされたフロントグリルも用意される。