日産の中型ミニバン「セレナ」の次期型の発売が迫っている。発売時期は、ガソリン車が先行し2022年末頃となりそう。そして、販売の中心となるのは新世代のシリーズ式ハイブリッド、e-POWER搭載モデルで2023年4月頃の発売が予想される。
次期セレナe-POWERは「新開発1.4L NA」が採用される、「1.5L VCターボ」案は不採用
日産のe-POWERは、1.2L発電専用エンジンをベースとするシステムが使われてきた。さらに、T33新型エクストレイル日本仕様に初採用された1.5L VC-TURBO e-POWERを加えている。
C27セレナは第一世代1.2L e-POWERの強化版を搭載
C27型セレナに搭載されたe-POWERは、先代ノートに搭載された第一世代e-POWERをベースに、モーター出力のアップ、オイルクーラーの追加、パワーモジュールの強化、リチウムイオンバッテリーの増量などが盛り込まれることで、ミニバンの重量増に対応したシステムである。ただし、その発電エンジンは基本的には先代ノートと同じで、直列3気筒1.2LのNAという仕様であった。
次期セレナには、第二世代1.4L e-POWERを採用
1.2L e-POWERは、2020年発売の新型ノートを皮切りに第2世代型に進化した。この第二世代 1.2L e-POWERをベースに、1.4Lに排気量アップすることでミニバン向けに重量増対応されたシステムが、次期セレナ搭載のパワートレインとして採用される。
次期セレナへの採用は見送りへ、1.5L VCターボ e-POWER
e-POWERは、1.2Lに加え、エンジンバリエーションが一つ増やされた。これはT33新型エクストレイル日本仕様に初採用された、1.5L VCターボを発電エンジンとするものである。
エクストレイルと同じ2.0Lクラス車である次期セレナへも、1.5L VCターボの搭載が期待されたが、これは見送りとなった。
次期セレナで搭載する可能性があるVCターボとは?可変圧縮比ターボ量産化は日産だけ
日産だけが商品化に成功した可変圧縮比エンジンは、その2.0L版が海外仕様インフィニティQX50で先行導入されてきた。エンジンの回転数や負荷の状況に応じて、最も熱効率が高くなる圧縮比の設定が可能となり商品化に成功した可変圧縮比エンジンは、その2.0L版が海外仕様インフィニティQX5、高出力化と環境性能を両立することができる。高速度域を多用する欧州ならではのニーズ、あるいはボディサイズの大きな車種に適応させるため、VC-Turboの技術でe-POWERを補強したという見方もできるだろう。
次期セレナにマイルドハイブリッド車は継続されるのか
e-POWERの仕様に注目が集まる次期セレナであるが、ユーザーサイドでは低価格グレードが残されるのかも重要な問題だ。昨今の日産は、電動車メーカーとしてのブランドイメージを高めるため、パワートレイン選択肢をe-POWERあるいはEVに絞った新型車投入をしてきた。
2020年発売のキックス、ノートはいずれもe-POWER専用車。さらに、T33新型エクストレイル日本仕様のパワートレインは、1.5L VCターボ e-POWERのみとなった。車両の電動化は、値上がり幅が大きくなるというデメリットがある。
次期セレナは、e-POWERの発売が遅れ、低価格パワートレイン車が先行発売される見込み
次期セレナは、高付加価値なe-POWER搭載車の他に、ガソリン車とされる低価格パワートレイン搭載車も用意される見込みで、むしろ後者のほうが先行して発売されるスケジュールとなっている。このあたりは電動化イメージを進める、昨今の日産の流れとは異なる。しかし、サプライチェーンの問題が比較的少ないガソリン車を先行販売することで、新型セレナのスムーズな生産と供給が実現する可能性がある。
セレナの下のクラス、コンパクトミニバンが実現すれば、セレナはe-POWER専用車になる可能性
日産のラインアップでは、3列シート車としてNV200もあるが、これは商用メインのモデルである。実質的には、C27型セレナのMR20DD-SM24型を搭載するマイルドハイブリッド仕様が、ミニバン車種のボトムラインとして機能しており、無くてはならない存在となっている。
かつて日産にはラフェスタというミニバン下位モデルがあったが、自社生産車は2012年に終了している。その後は、マツダからプレマシーの車体供給を受けたOEM車種としてラフェスタは存続されたが、これも2018年に販売終了となっている。
そして、これを引き継ぐモデルとして登場が期待されていたのが、新型ノートの3列シート派生車種である。新型ノートの派生モデルについては、そのボディタイプについてあらゆる検討がされている。すでに発売されたプレミアム志向のノートオーラに加え、3列シートのコンパクトミニバンの計画も進行中のようだ。
C27型セレナのマイルドハイブリッド車は、ボディサイズ的に格下の他社コンパクトミニバン(トヨタ・シエンタ、ホンダ・フリード)と競合させ、受注を勝ち取っている現状がある。日産がコンパクトミニバン車種を持たないまま、次期セレナが全車e-POWERとなれば、ここの販売台数を失うことになり、これは避けたいだろう。
セレナはe-POWER専用車となるかもしれないが、その場合はノート派生の新型コンパクトミニバンを発売させることで、C27型セレナ マイルドハイブリッドに変わる低価格モデルを用意するというのも一つの可能性として残される。
次世代e-POWERのセレナ搭載は次々モデル以降か
日産は、開発中の次世代e-POWERを発表している。これは2025年の技術確立、その後の量産化とあるので、セレナへの搭載は次々回以降のタイミングでの実現となるだろう。
次世代e-POWERの熱効率は50%の達成が可能と発表され、自動車向けガソリンエンジンとして、これまでの常識を覆すものとなる。
2021年時点で、熱効率45%は量産可能段階
この熱効率50%という数字、よく見ていくとエンジン単体では最大で46%となる。そして量産可能な技術開発を完了させているのは熱効率45%の段階まで、ということで50%というのは現時点では実験室レベルの話。
それでもプリウスの40%、ヤリスハイブリッドの41%などと比較して、その優位性は明らかである。
完全定点運転がe-POWERの最終目標
日産のe-POWERは、トヨタのTHSⅡなどとは異なるシリーズ式ハイブリッドを採用してる。駆動力は全てモーターから発生したもので、ガソリンエンジンは発電専用として使われる。
この発電専用というところがポイントで、ある一定の回転数だけに特化して効率が上げられた完全定点運転がe-POWERの開発における目標の一つとなっている。この完全定点運転のもとで混合気のさらなる希釈を進める新燃焼コンセプトを日産は「STARC」(Strong Tumble and Appropriately stretched Robust ignition Channel)と名付けている。
ちなみに、C27型セレナe-POWERでは1.2L NAのHR12DE型が採用されてきたが、これは古くは2010年発売のK13型マーチからの使い回しであり、発電専用にゼロから開発されたエンジンではない。こういった経緯からもe-POWERは、まだまだ改善の余地があるはずだと、以前から注目されていた。
ちなみに、1.5L VCターボ e-POWERは、回転数を含めたあらゆる条件下での熱効率向上を目的としたものである。次世代e-POWERの完全定点運転とは技術の方向性は異なる。
新型セレナも参戦、国内市場はミニバン戦争に突入
国内中型ミニバンのセグメントでは、トヨタ新型ノア/ヴォクシーが2022年1月13日に、ホンダ・ステップワゴンが2022年春に発売された。その最後に登場する新型セレナは、これらライバルモデルの動向を見極めてからの微調整が可能で、いくらか有利な条件で戦えるかもしれない。
セレナはミニバン販売台数1位を目指す、トヨタはノア、ヴォクシーを継続
最大のライバル、トヨタ勢は従来3車種に展開していた姉妹モデルをノアとヴォクシーに絞り、エスクァイアを廃止とした。
ただし、新世代型となってもノアとヴォクシーにセールスが二分されるため、車名別販売台数のランキングでは、セレナが有利となる。セレナがミニバン販売台数1位を獲得できる可能性は残される。
セレナのライバル、ステップワゴンも新型デビュー
セレナのもう一つのライバル、ホンダ・ステップワゴンもフルモデルチェンジを受けて新型が発売されている。
ステップワゴンは先代型が不人気車となっていた。新型はエクステリアに磨きをかけており、販売台数が延びそう。