新型トールへのフルモデルチェンジ実施時期は、2023年度後半が見込まれる。
ダイハツでは、仕入先の火災による部品欠品の影響により、2023年6月下旬~7月上旬にかけて多くの車種の生産が停止されてきた。トールおよび姉妹車種のルーミーについては、生産停止を免れており、大きな影響は受けていないように見える。
現行トールの納期については、工場出荷時期として「ご注文いただいてから、(6月29日時点)2ヵ月~」と発表されている。また、姉妹車種のトヨタ・ルーミーは(7月4日時点)4~5ヶ月程度としている。これらの納期は、火災の前と後で変わっておらず、概ね計画通り生産されてきた可能性が高い。
近いうちに、ルーミーがオーダーストップとなれば、フルモデルチェンジに向けた販売調整と考えることができそう。
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新型トールはフルモデルチェンジでハイブリッド搭載か、ダイハツ独自開発 1.2L e-SMART HYBRID
2023年後半頃が想定されるフルモデルチェンジで、2代目モデルとなる新型トールには、シリーズ式ハイブリッドの「e-SMART HYBRID」の搭載が予想される。
ダイハツは「ロッキー e-SMART HYBRID」を2021年11月に発売した。これに搭載されるハイブリッドシステムは、その後の他モデルへの展開が期待されたが、現在のところ姉妹車種の「トヨタ・ライズ」への採用に留まっている。トールがフルモデルチェンジすることで、ようやく採用車種が増やされることになる。
ダイハツが小型車のハイブリッド化に向けて動きがあることは、「ロッキー e-SMART HYBRID」の登場以前より噂となっていたが、その内容についてはトヨタからハイブリッドシステムの供給を受けるなどの予想もあった。しかし、「e-SMART HYBRID」は、ダイハツが独自に開発したシステムである。
トヨタの「THSⅡ」はモーターとエンジントルクの両方が駆動輪に伝わる「シリーズ・パラレル方式」であるが、ダイハツの「e-SMART HYBRID」は発電専用エンジンを搭載し、モータートルクだけで駆動する「シリーズ方式」が採用される。
「シリーズ方式」は、日産が「e-POWER」の呼称で、これまでに多くの国内向け車種で搭載させてきたが、「e-SMART HYBRID」もこれに近いシステムとなる。
また、エンジンサイズについても「THSⅡ」と「e-SMART HYBRID」には違いがあり、「THSⅡ」は1.5Lが最小クラスであるが、「e-SMART HYBRID」は直列3気筒の1.2Lで一回り小さくなっている。「e-SMART HYBRID」は、ダイハツが得意とする小型車種に最適化されており、比較的ローコストであることも特徴の一つである。
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トールがフルモデルチェンジでハイブリッド化することは避けられない、政府の2030年度燃費基準
政府の方針によると、2035年の段階でコンベンショナルガソリンエンジン車の新車販売が禁止されることになっており、その後はハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、バッテリーEV、燃料電池車といった電動車のみの販売に完全移行することになる。
しかし、これより早いタイミングで訪れる2030年度の燃費基準は2016年度比で約3割の向上が求められており、その達成には低価格帯の軽自動車や小型車についても、本格ハイブリッド車を新車販売のメインにしていく必要がある。
例えば、トールのライバル車種であるスズキ・ソリオにはハイブリッドモデルがあるが、これはコストを抑えたマイルドハイブリッド車のため、大幅なパワートレイン変更がなければ、2030年度基準を達成するのは難しいと考えられる。本格ハイブリッドは大容量バッテリーと高出力モーターなどが必要なため車両価格が大幅アップすることが避けられない。ダイハツのようにトヨタからの技術協力が可能であっても小型車への商品化は難しかった。
それでも、規制が差し迫った中では、そのようは言い訳は通用しない。ダイハツのモデルは軽自動車を含めてハイブリッド化していくことになる。
また、新型トールが登場する2024年頃の段階では、まだガソリン車も残されるはず。従来的なガソリンエンジンを搭載した低価格モデルのラインアップ継続も期待できるだろう。
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新型トールはハイブリッド車だけでなく、低価格なコンベンショナルガソリンエンジン+D-CVT車も残される可能性
トールはフルモデルチェンジでハイブリッド化が期待されるが、コンベンショナルガソリンエンジン搭載モデルの併売も予想される。そんななか、DNGAテクノロジーの一つであるトランスミッションのD-CVTは、搭載が期待される機構の一つである。
従来のベルト式CVTは2つのプーリーとベルトの組み合わせによる変速システムであったが、D-CVTではさらに遊星ギアが加わることで、変速比幅(レシオカバレッジ)が拡大される。
発進から中速度域までは、従来のベルト式CVTと同様に、2つのプーリーに巻き付くベルト径の組み合わせを変化させることで無段階的に変速が行われる。
そして速度が上がり、ベルト径だけによる変速比が最小に達すると、ここで遊星ギアの介入が始まる。
この遊星ギアにより、ベルト径の組み合わせと変速比の関係は反転する。これまでとは逆方向にベルト径を変化させていくことで、変速比を更に小さくすることが可能となる。
D-CVTでは、8速AT相当の変速比幅を実現しており、エンジン回転数を低く抑えた高速巡航が実現される。

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フルモデルチェンジ新型トールの燃費向上は、ハイブリッド化のほか、ガソリン車のCVT変速比幅拡大が重要ポイント
トランスミッションの変速比幅を拡大させることは、排ガス規制が強化されるなか重要度を増している。
特にベルト式CVTでは、追加でギアを組み合わせていくことがトレンドとなっており、D-CVTのほかにも例がある。トヨタのダイレクトシフトCVTでは、発進ギアを追加することで変速比幅を拡大させている。ギアが直結されたダイレクト感のある発進加速が可能で、高速度域にかけてはベルト式CVTによるスムーズな加速を実現している。
ダイレクトシフトCVTは、直感的な加速感を得ることにも拘った上級トランスミッションで、レクサス車種にも使われる。
D-CVTは、コストとサイズの制限が厳しい小型車向けトランスミッションという位置づけで、DNGAプラットフォームが導入されているタント、ロッキー、タフトといった車種で採用されてきた。
DNGAは軽自動車、Aセグメント、Bセグメントを広くカバーする共通プラットフォームであることも特徴の一つ。また、国内モデルだけでなく、新興国向け車種にも適応されていく。
DNGAはトヨタのTNGAと混合されがちであるが、トヨタでは生産されない車種に向けたものであり、ダイハツ独自のプラットフォームである。
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トールのフルモデルチェンジ まとめ
次期型トール 予想
- 2代目モデルへのフルモデルチェンジは、2023年度後半に実施される可能性
- 2023年10月に開催のジャパンモビリティーショー出品期待
- DNGAプラットフォーム採用予想
- 1.2L e-SMART HYBRID採用予想
- 低価格なガソリン車も継続か
- トヨタ姉妹車種のルーミーも継続予想
トールが2022年9月1日の一部改良で、法規対応と値上げ実施
ダイハツの小型ワゴン車「トール」の一部改良が2022年9月1日に実施された。その内容は、法規対応がメインで、各グレード+1万円の値上げが実施された。また一部装備でパナソニック「ナノイーX」が採用された。
新型トール一部改良による新価格、値上げの内容
グレード | 駆動方式 | 消費税込み車両本体価格 | 差額(円) | |
新価格(円) | 旧価格(円) | |||
Gターボ | FF | 1,874,500 | 1,864,500 | 10,000 |
G | FF | 1,753,500 | 1,743,500 | 10,000 |
G | 4WD | 1,929,500 | 1,919,500 | 10,000 |
X | FF | 1,566,500 | 1,556,500 | 10,000 |
X | 4WD | 1,742,500 | 1,732,500 | 10,000 |
カスタムG ターボ | FF | 2,056,000 | 2,046,000 | 10,000 |
カスタムG | FF | 1,924,000 | 1,914,000 | 10,000 |
カスタムG | 4WD | 2,100,000 | 2,090,000 | 10,000 |