トヨタ・プリウスのフルモデルチェンジは2023年1月頃の実施時期が予想される。
トヨタは2022年に現行ラインアップの多くの車種に対して、一部改良を実施していく計画。半導体不足で納期が長引くなか、一部改良の対象モデルを一旦受注停止とし、以降は改良済みモデルの販売に切り替えていく動きがあった。そんななかプリウスは、一部改良の予定車種には含まれていない。つまり予定されていた通り、フルモデルチェンジが実施されることになるだろう。部品供給の遅れで計画はやや遅れるものの2023年初頭あたりのフルモデルチェンジが予想される。

プリウスの1.8Lハイブリッドはフルモデルチェンジ後も改良を加え継続される
新型プリウスに搭載されるハイブリッドパワートレインは、進化を遂げた第5世代のTHSⅡが採用される。メインユニットに関しては引き続き1.8Lガソリンエンジンの2ZR-FXE型の搭載となるだろう。
既に第5世代のハイブリッドシステムについては、2022年1月にフルモデルチェンジ発売された新型ノア・ヴォクシーで初搭載されており、以下に代表される改良が盛り込まれた。
- PCUにおける損失低減
- ECUからの高周波ノイズ低減
- E-Fourにおけるリアモーターの高出力化
- リチウムイオンバッテリーの小型化
これらの最新技術は新型プリウスにも採用されることになる。
トヨタは1.8L THSⅡを継続させる方針
トヨタのハイブリッドシステムは、最小クラスの1.5L(M15A-FXE)があり、現行プリウスの1.8L(2ZR-FXE)、その上に2.0L(M20A-FXS)がある。
なかでも1.5Lと2.0Lは、ダイナミックフォースエンジンと呼ばれる新世代パワートレインである。プリウスシリーズにもいずれ2.0Lのダイナミックフォースエンジンが搭載されるのでは、という予想もあった。しかし1.8Lをベースとしたシステムはまだまだ改良の余地があり、今後も継続していく方針のようだ。
プリウスのフルモデルチェンジで採用が期待される新技術、全固体電池、次世代リチウムイオンバッテリー
新型プリウスで採用される新技術にも注目が集まる。
まず全固体電池については、トヨタはBEVではなくハイブリッド車から市販車搭載をスタートさせる方針となっている。
全固体電池を搭載したBEVは、試作車による走行試験を完了させている段階にあるが、必要な容量を量産するとなると、技術的にもコスト的にもまだまだ障壁は高い。比較的、必要容量の小さいハイブリッド車から市販車への搭載実績を積み上げることになる。
なかでも新型プリウスは、全固体電池搭載車種の有力候補とされるが、その発売はモデル中期まで待たされる可能性がある。
また、水素燃焼エンジンが採用されるという話もある。ただし、水素燃焼エンジン搭載のプリウスが実現したとしても話題作りや試験的な意味合いが強く、手に入りにくいものとなるはず。
一般的なユーザーにとって、技術的に重要なポイントは、PHEV(プラグインハイブリッド)を採用するグレードが拡大することにある。
プリウスのフルモデルチェンジ歴史、5代目モデルを予想
プリウスシリーズは1997年12月に初代モデル(NHW10/11型)がスタートした。世界初の量産ハイブリッドカーとして、1.3Lの1NZ-FXE型エンジンと前期型は1CM型モーター、後期型は2CM型モーターが組み合わせられた。この電動パワートレイン、THS(Toyota Hybrid System)は、現行の50系プリウスまで続くTHSⅡの前身となっている。
その後、5年後となる2003年には、大ヒットモデルとなった2代目プリウス(NHW20型)がフルモデルチェンジ発売となった。空力特性を追求したワンモーションフォルムは一目でハイブリッドカーと認識され、ハイブリッド専用車を主要カテゴリにラインアップすることが国内販売で成功する方策の一つとして考えられた。また、この世代からはハイブリッドシステムはTHSⅡにバージョンアップしており、エンジンは1.5Lの1NZ-FXE型を搭載する。
6年後の2009年には3代目プリウス(ZVW30型)が発売された。エンジンは1.8Lの2ZR-FXE型が採用され、システム出力が向上し車格も上げられた。先代型に続き日本市場で大ヒットとなることは確実視され、むしろ北米でのセールス的成功が優先された。またワゴンボディの派生モデル、40系プリウス(ZVW40型)が2011年に発売され、日本ではプリウスαとして人気車種となった。
さらに6年後の2015年に発売された4代目プリウス(ZVW50型)は、北米に続き、欧州での販売シェア獲得を目論んだモデルで、米国ラスベガスに続きフランクフルトでも大々的に発表された。ハイブリッドシステムのTHSⅡの呼称は継承されたものの、トランスミッションは従来のプラネタリーギア方式から、低損失かつコストダウンを実現する平行軸ギア方式が採用され、大幅改良されている。
そして、前回フルモデルチェンジから7年を超えるタイミングで発売予定となっているのが、5代目となる次期プリウスである。搭載されるパワートレインは、1.8Lエンジンが踏襲された第5世代のハイブリッドシステムとなるが、これは既に新型ノア・ヴォクシーで採用済み。しかし、車体重量が大きく異なるプリウスでは、何らかの新技術の採用も期待される。
また、ボディスタイルはワンモーションフォルムが継続されるが、スポーティかつ、プレミアムイメージを高めた結果、ルーフ高さが抑えられ、後席ヘッドクリアランスが犠牲になる可能性がある。
プリウス2021年の一部改良は小幅な変更に留まった、2023年初頭フルモデルチェンジ期待
現行型プリウスは、2021年6月に一部改良が実施されたが、その内容は、特別仕様車の設定、装備の標準化やボディカラーなどを対象にしたものに留まった。
このタイミングで大掛かりな改良が実施されると、次期モデル投入時期の先延ばしを疑う必要が出てくる。半導体などの部品供給不足のなかやや計画が遅れそうだが、それでも2023年初頭のフルモデルチェンジが予想される。

プリウスはフルモデルチェンジでプレミアム化される
1997年の初代プリウス登場から23年が経過し、ハイブリッドカーは広く普及を遂げることに成功した。ハイブリッドカーの先駆者としてのプリウスの役目は終えていると考えることもできる。
最近では、ハイブリッドカーは、もはやEVに追われる存在となってきており、いつまでも先進的なイメージではいられない。
そんななかプリウスに課せられた、新たな挑戦がプレミアム化である。
次期プリウスでも、ワンモーションフォルムは踏襲され、プリウスらしさは残される。しかし、プレミアムブランドで採用が多い4ドアクーペに近いスタイルとなるのがエクステリアにおける最大の特徴となる。
全高は下げられ、全長と全幅は拡大。ホイールベースも延長を受ける。スタイリッシュなルーフラインと引き換えに、ヘッドクリアランスは躊躇いなく削られるだろう。このあたりを気にするユーザーはカローラなどのハイブリッドモデルを選べば良いとなる。
次期プリウスはエクステリアが相当にスタイリッシュ、スポーティーになり、これまでとは違うプレミアムなポジションの獲得に挑戦することになる。
次期プリウスは2代目インサイトと同じ轍を踏むのか
ワンモーションフォルムで低い全高を設定すると、後席居住性が悪化しやすい。これは、かつてホンダ2代目インサイトが3代目プリウスとの販売競争で敗退した理由の一つでもあった。
次期プリウスも2代目インサイトと同じ轍を踏むのか、という考えもあるかもしれないが、次期プリウスはプレミアム化により、そういった次元の競争からも脱却する。